本当に残念だった。

  • 2012/05/04(金) 20:48:31

「わかりました。今日はもう帰ります」
僕は腰を上げながら自分の荷物を持った。
出てけ出てけ、と言う先輩に背を向けてドアノブにてをかけた。ひねると、もうすっかりこのドアのスプリングの重さにも馴染みが出てきたな、と感じた。
「じゃあ、また明日来ます」
と言う言葉に何も返してこない。
そのまま、無言で扉を開けて無言で閉める。
まあ、来るなと言わないってことは彼氏に復縁したいと思わせる明日は行ってもいいみたいだ彼女に復縁したいと思わせる僕の勝手な解釈ではあるけど、それを目安にしてる。
階段を下りると、先輩のお母さんとはち合わせた。
「いつもありがとうね」
「いえ、先輩にはすごくお世話になってましたし」
そう返すと、微笑んでくれる。先輩は母親譲りのところが多いと、常日頃思っている。
「また明日も来てくれるのかしら?」
「はい。あ、お邪魔じゃなければ……」
「お邪魔なものですか。ぜひ来てお話してあげて」
僕は、はいと返事をして、彼女の家を後にする。空の半分はすでに闇に呑まれていた。もうすぐ、日も暮れてしまうだろうと、歩調を急ぎ足に変えて家へと向かう。
家に着き、ポケットから鍵を取り出していつもの動作で鍵を解く。家に入ると、自動センサーで部屋の電気がぱっとついた。玄関からまっすぐ先に見えるリビングとを隔てる扉があった。すりガラスの向こうは電気がついていない。今日も誰も帰ってきてないのか。